マーク・ホイットフィールドと息子たち

侮るなかれ家族バンド!

1990年というと、まだ私は札幌の中学2年生で、4つ上の姉が放置していたギターを「くれ!」と頼んだら、結局¥5000で売り付けられるというくらいの頃。

当時はまだまだバンドブームでThe Blue Heartsがお気に入り。いつも下校中とか馬鹿みたいに飛び跳ねながら友達と歌っていた。

あと、この頃はまだBoΦwyが解散2年後くらいでまだまだ人気があって、布袋寅泰さんの『Guitarythm』とかをギターやるなら聞けば、と姉にテープもらったりしてた。中学校の同級生もたぶん8割ぐらいは聴いてたんじゃないか。

バンドスコアとかもみんなで回したりしてギターを弾くことがすごく盛り上がってた時期だと思う。

それで肝心の姉からのギターはセットで3万くらいのやつでアリアプロのなんか尖ったヘッドの黒いストラトシェイプのギター。後に分解されてギターの構造を確認するための個人教材となってしまった。付属のアンプが結構すごくてノイズが常にあって常にファズがかかっているみたいなやつでした。たぶん両方とも実家にまだあるんじゃないだろうか。

それでマーク・ホイットフィールドだけど、ギターマガジンに彼のデヴューアルバムのレヴューが乗っていたのをよく覚えている。

確かレヴューの内容は”「Marks Man」はその当時のジャズギタリストとしては純粋にジャズで培養されていて驚く”という内容だったと思う。

実際、ジミー・スミスのバンドで弾いていたりしてマークはオルガントリオのフォーマットに明るい。オルガニストのKANKAWA氏も「あいつはジミー・スミスに仕込まれてたから」と話していた。フルアコで粘りもあるプレイ。ほどよくブルージィでスウィートな演奏は正統派な感覚があって、オーガニックなR&Bシンガーなどとの共演も多く、レアグルーヴ的なところにも需要があるのではと思っていた。

実際、そのあたりの需要に関してはよくわからないのだが、メロディアスで良いギタリストという認識は変わらない。この人66年代の生まれだが、メジャーで早くからリリースをした存在でもある。

その一方でバークリー卒業後にウォール街で働いたりしていたこともあるので意外に苦労しているのかもしれないし、もともと人間力の高いタイプなのかもしれない。


昔マークはニューヨークのZinc Barでライヴを見た記憶がある。

割と太い音、正統派のヴォイシング、綺麗なライン、ほどよい粘り、黒さ、

特に歌うようなギターのメロディアスな音使いとアーティキュレーションは印象的だった。

Zinc Barと言えば毎週月曜日にRon Affifというギタリストがレギュラーでやっていて正統派のハードバップなギタートリオで演奏している。たぶん未だにやっているのでおそらく20年くらいやっているが、あまり日本では話をきかない。


久々にマークを観にいこうと思い、最近ジャズに嵌っている映画監督のT氏とともにコットンクラブへ赴いた。

T氏は万全に楽しもうと最新作をしっかり予習して臨んでいる。

この日は
ドラム マーク・ホイットフィールドJr
キーボード デイヴィス・ホイットフィールド

それでベースはNYで活躍する中村恭士

という布陣。

別日でハープ奏者の伴奏にも入っていたので結構長い日本の滞在だったようだ

純粋に楽しく、マークのギターはどこか艶かしくスウィートだった。

ドラムのJrは反応がよく、少しアプローチの荒さも感じたけれど、十分に実力はあり、弟のデイヴィスは自分が見たセットではエモーショナルでリリカルでいいプレイヤーだなと思った。ただ鍵盤奏者は層が厚いけれどまだ24歳ということで、ここからオヤジを置いて独り立ちしていくのかもしれないなと思った。

マークはワイヤレスシステムを使い、オートワウなども噛まして意外にエフェクターをつかっていた。ただ少し音の抜けは悪く、もう少しヴォリュームが欲しいなと思う場面もあった。それでもまるでストリートファイターに出てくるヨガ戦士のようなルックスと長い指から出てくる音はギュっと中域が出て腰のあるプレイは非常に魅力的だった。

また中村のベースプレイがとてもよく、ボトムをしっかり支えながらドラムやギターを後ろから刺激して煽っていくような感覚とこの家族バンドに異物感なく混ざる感じがあった。なんというかマークの甥っ子という感じだろうか。

というかファミリーバンドなんて言って大丈夫かよと思っていたがちょっと侮っていた。

またアルバム収録曲のちょっとロックなリフの感じとかもけっこうかっこよくてギターっていいなと改めて思ったりもしたのであった。

それで最近は開催場所がライヴ後に動画を上げていたりして見れるので見てみるとよいかもしれない。


思えば、ライヴに関してはもう少し上手く写真などを取らせてプロモーションの場にすれば集客なんかもあがるだろう。それは来日ミュージシャンとて同じことなのではないだろうか。

少しづつでも音楽のビジネスとしてのあり方は変わったほうがよいのではないかと感じずにはいられない。

(取材・文:鈴木りゅうた)

 

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