(U)nity is Power!!!

融合は力なり!

2015年に公開された亡命キューバ人を密航里帰りでライヴをするというドキュメンタリー映画『Cu-bop』。その標的にされたアクセル・トスカAxel Tosca。2016年にサントラがリリースされて、伸びやかで大胆なそのピアノに圧倒された。

彼が同じく亡命キューバ人2世で、一緒にキューバ密航ライヴにも参加しているドラマーのアマウリ・アコスタと組むバンドが(u)nityだ。サントラ内でもアクセル・トスカという名義ではなくこの(u)nityという名義でクレジットされている。トリオ編成に限らず、大所帯になることもあり、固定メンバーはいるがあくまで流動的なグループ編成のユニットで、昨年2017年の夏にまとまった量の音源をRopadopeからリリースした。

Rope-a-dopeといえば

Ropadopeといえば90年代後半から2000年代初頭のジャムバンド流行時に、DJロジックやSexmobなんかのカテゴリーをややはみ出した音楽をリリースしていたレーベル。最近になるとSnerky Puppyなど割と時代の先頭で旗を振る音楽をリリースしている。クリスチャン・スコットもここから出していて、いち早くBandchampなんかを積極的に利用してインターネットでの拡散力を用いているレーベルでもある。CDはあくまで物販のひとつという印象だ。一時、Ropadopeのサイトを観たら、Tシャツなどのグッズだらけで、音楽は取り扱っていないのかなと思っていた。実際にはそんなことはなくて、けっこうこの時代に長寿なレーベルになりつつある。

ここ3年くらいアクセル・トスカを注目していたので、リリースが決まるとササっとこの『(u)nity is power』を入手した。もはや目的がわかっていれば、すぐに検索できるしどこからも購入出来る時代だ。こんな時代に、情報解禁日などを設定するのはなかなか難しいし、むしろ決定した段階で、その段階の情報をリアルタイムで伝えていったほうがプロモーション効果も大きい。

個々の背景を取り込んだ音楽プロジェクト(u)nity

このアルバムはアコースティックなトリオでも十分に感じさせた現代ジャズ的なパルスの効いたリズムや、メロディックなリフの利用を残している。一方で大きく異なる点はヴォーカリストを大々的にフィーチャーし、サウンド面は未来志向である点である。アクセルのピアノが主役として存在していた『Cu-bup』サントラとは趣がことなり、楽曲や他の楽器がメインで出てくるところも多い。全体的にはポップな作品に仕上っている印象だ。

ゲストメンバーも多いが軸はアマウリ・アコスタ、アクセル・トスカ。

アマウリ・アコスタAmaury Acostaは、ニューヨーク生まれの亡命キューバ人2世。キューバンとジャズからファンク・R&Bなどに影響を受けた21世紀型ドラマー。アリ・ホーニッグやグレッグ・ハッチンソンなどに指導を受けたこともあるようだ。スタイルは、複雑なメトリックモジュレーションからブレイクビーツ様のエレクトリックミュージック的アプローチを混ぜながら、クラーベを基本にしたリズムパターンやファンキーなグルーヴも使いこなす。インテリジェントでソリッドなタイプだ。

アマウリとアクセルが、参加するミュージシャンが持つ様々な要素を混ぜ合わせて表現しようと2006年から始めたプロジェクトが(U)nityだ。

レギュラーとして他にプロヴィデンス島出身のサックス奏者マックス・カドワースMax Cudwort。カドワースはバークリーで音楽を学び、メイシー・グレイなどとも共演している。

パリ出身のギタリスト、マイケル・ヴァレヌMichael Valeanuはジャズを主食にしているギタリストで自己名義で2枚のアルバムをリリースしている。

他にマイアミ出身のベーシスト、クリス・スミスChris Smith,がコアメンバー。マックス・カドワースは共同プロデューサーとしてもクレジットされている。

あくまでバンドではなく、プロジェクトとして、メンバーの要素を持ち込んだ独自の音楽を提示することがテーマだ。そのため、自然と音楽は一つのスタイルにいないハイブリットなものになっていて様々な要素の音楽が感じ取れる。

皆共通しているのはジャズを学んできていることで、ここを共通言語にしている。あくまでそれぞれのメンバーが一枚の絵の要素として置かれている人間重視型プロジェクトと言える。

『(U)nity is Power』と世の中の気分

曲によってはベースにピノ・パラディーノがいたり、キューバ人脈ではペデリト・マルチネスがパーカッションなどが参加している。そして、全面でフィーチャーされるシンガーがアルバムの全体像をポップにまとめている印象がある。

“平和”や“相互理解”などなんとなく大仰でなテーマの曲をジョナサン・ハワード、ローレン・デスバーグが歌う曲が3曲ある。

こうしたことがテーマになってくるのは、アメリカでも、人種差別問題などが新たに浮き彫りになって事件が起こったり、トランプの移民排斥的政治姿勢と大きく関連しているのではないだろうか。

今のアメリカ政府の方針だけでなく、日本でも右傾向というか、異分子排除傾向が強くなってくると、10年前は“ちょっと恥ずかしいな今更”と思うようなメッセージも意味合いが違って深刻だ。

そうした総合的な音楽表現プロジェクトだが、アルバムにはアマウリの携帯に入れられたロバート・グラスパーからの留守電も入っていて、このプロジェクトを楽しみに待っていたミュージシャンが多くいることを感じさせた。

このアルバムは今年の頭には国内版としてもリリースされた。映画も改めて世界配信となっている。作秋には菊地成孔氏のバンドにゲスト的にアクセルが参加するなど、アクセル・トスカAxel Toscaはすっかり国内でも注目の存在となった。

(u)nityとしての初の日本でのライブ

その流れでこの5月に(U)nityが来日公演するという。誰かに最近何がいいか聴かれたらこの作品を推していた身としては、なんだろうと見に行かなければいけない。それで私の発言に感化されたK氏を伴ってコットンクラブへいそいそと出かけたのであった。

開演時間になりメンバーがステージに出てくると、とにかく派手なアクセル・トスカ、ミスター・ビーンのようなアマウリ・アコスタ、背がでかいのに緊張してる感じのクリス・スミス、アクセルに負けずなぜか悪童感のあるマイケル・ヴァレヌ、大学院生みたいなマックス・カドワースと、それぞれ良い感じに個性的だ。

実はこの1週ほど前にジョン・パティトゥッチのベースを観ているのだが、それが余計にクリス・スミスの緊張感を感じさせたのかもしれない。笑顔をみせたりもするのだが比較してしまった相手が悪かった。公平な目で見ればクリスはエレクトリックベースをR&Bなどのブラックミュージックルーツの幅広いスタイルで弾けるプレイヤー。まあ、実際、中盤あたりではプレイにもグルーヴにも固さが取れた溌剌とした演奏を聴かせるようになったので気負っていた部分はあったのかもしれない。

アクセル・トスカはここでは番頭的な看板役者としてシンボル的な立ち位置か。アマウリがむしろ全体的な構成やコンセプトを握っているようだ。グルーブの作り方もドラムそれぞれの鳴りものの音色とパターンの組合わせを豊富にみせて、非常に器用な印象。もっと現代的なポップさも理解していて、キューバのルーツにこだわるけれどその他のエッセンスにも敬意を払う姿勢が素晴らしい。そして見た目がドラムがめちゃうまなミスター・ビーンという感じでよい。

圧倒的存在感を放つJ Hoard!

途中、ゲストとしてクレジットされていたJ・ホアードJonathan Hoardが登場した。思い切った女装で出てきて、皆をあっと言わせた。しかし歌を歌い出すとさらにあっと言わせた。圧倒的表現力と世界観の大きさ。完全に会場全体を飲込んで釘付けにした。アルバムでも歌っている”Everlasting Beliefe”や他の曲も歌ったのだが、そのメッセージを伝える強さと歌唱力は桁違いだった。

またこのプロジェクトのメッセージである「unity is power」ということを全面的に伝え、説得力溢れるステージだった。あらゆるカテゴリーを超えて繋がる世界の強力な力とは、なんとも音楽でわかりやすく表現可能なのである。国籍、人種、性別、もしかしたら、人間であるかどうかも超えることで生まれる力。

自然エネルギーの利用ももしかしたらこの「融合は力」ということなのかもしれない。何かと分断し同一化を要求する社会の息苦しさを打破する簡単な答えが彼らの音楽にはある。

(文・写真/鈴木りゅうた)

(u)nity website

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