1年遅れでCu-bopについて語ってみる

今どきの商売に乗せられる

昨年2016年の「Jazz Japan Award」選考委員の末席に加えて頂いた私。いつも「その年の印象的な作品は?」と聞かれるといっぱいありすぎて思い出し切らない作品は数しれず。

名作もたくさんあった、、、そんな中でインパクト大だったのはまず類家心平君の『Unda』。渦巻くカオスをコントロールする危険な香りがヒリヒリする作品だ。

今年の頭に見に行ってギターの田中拓也氏のプレイはもはやスラッシュメタルばりにリフがゴリついていて、異世界生命体のように成長していて驚いた。

そしてもう一つ忘れられないのがキューバに亡命キューバ人ミュージシャンが久々に母国へ密航して帰るというドキュメンタリー映画『Cu-bop』。作品は高橋慎一監督によるガチの2015年に劇場公開したドキュメンタリーで、アクセル・トスカというNY在住の若きキューバ人ピアニストを追いかけた作品で、そのサントラのCD盤レヴューを依頼されて聴いてぶったまげたのだった。


我慢出来ずにLPも

さてそのサントラにはアクセル・トスカ率いる(U)nitiyの他にキューバの実力派サクソフォニストであるサセル・ロペス率いるLos Cubanosの演奏も収録されていて、ニューヨークで進化しているキューバンジャズと正統派アフロキューバンの対比がとても興味深い内容なのだった。

特にアクセルのピアノが現代的なアプローチを見せつつ、リズムのいきいきした力強さや演奏の迫力が凄まじく、CDで再生するなり、すさまじい爆発力で迫ってくる。

イントロで様々なフレーズを指慣らし的に引用して弾いた後に始まるメインテーマのかっこよさたるや。途中でフレーズを思わずうたうところもライヴで録音されていて非常に強烈なのだ。アクセル以外のメンバーも非常に良くて、ドラムスのアマウリ・アコスタの生き生きしたグルーヴ感と迫力、ダイナミクスのつけ方も絶妙。

またドラムに合わせてグルーヴを引っ張るベースのルケス・カーティスの柔軟かつタイトなリフへのアプローチにも唸る。とにかく3人ともリズムが力強く躍動している。

そして何より3人の小さなところから大きなところまで緩急のついたダイナミクスレンジの広さには心を自然と動かされる。

それで紙資料には「CDのリリースと同時にLPがリリースされ、しかも収録曲が違う」と書いてある。しかも内容はハバナでの(U)nityのライヴを完全収録。これはもう発売日には購入意欲を完全にフルチャージされていたのだった。

発売元がディスクユニオンだったのでディスクユニオン新宿ジャズ館にいそいそと行くとアクセル・トスカのソロアルバムもあるじゃないですか。「完全に嵌められている、、、、、」と思いつつ購入に踏み切ったのはいうまでもない。しかし、守銭奴で慣らす自分をこうも懐柔するとは音楽というのは恐ろしい魔物。


ソロはジェフ・ワッツやらロン・ブレイクやらも参加。ロバート・グラスパーのカヴァーもあり。

でアクセルはAxel Tosca Laugartがフルネームで母がキューバンでは有名なシオマラ・ラガートってことが判明。内ジャケに母子の写真があってCommonのジャケを思い出した。

楽曲のバラエティ満点。


気づけば映画の公開が終わっていた….

でやっぱり映画みたくなるよねってのが人情。2015年公開だけど菊地成孔さんが推薦したってのもあってロングランしてるってんで余裕ぶっこいてた。

でもそろそろ行こうと思ってたら東京での公開はもう終わってんじゃん(涙)。

もうDVDも買っちゃうよね。これは完全に販売元の思うツボですよ。

DVDには(u)nityのライヴ云々ももちろん、キューバへのちょっと緊張感ある密航里帰り、伝説的なキューバのジャズメンでもあるサセル・ロペスのリハーサル、キューバのキリスト教と土着の宗教が混ざり合ったような祭りなど興味深い映像だらけ。

これは音楽愛好心とはまた別の興味を刺激して来て見入ってしまった。

またキューバの町並みのヴィンテージ感のハンパのなさ。オールドカーや古ぼけたバスなど映像資料的にも貴重すぎる。

一方、映画として捉えた場合、けっしてストーリーものでもなく、瞬間を収めたもので、特にナレーションもない。生々しいとも言えるが、ダラダラしてつまらないという意見もあるかもしれない。

でも世の中もっとダラダラして、見てるの辛いってのもあるしな。その場のリアリティのことを考えるとこのように編集した感覚はよく理解できる。

それで先月、よくお世話になっていた元編集の方と偶然の再会をした際に、「去年は何が面白かったですか?」と聞かれて「いや〜キューバップが〜」と言ったら、高橋さんはお知り合いで、しかも「サセル・ロペスが来日した時にうちの子供、めっちゃ遊んでもらいましたよ」って。

イッツ・ア・スモール・ワールドな話になってしまった。世間は狭い。

文・写真:鈴木りゅうた

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