和太鼓は現代社会に語りかけるー御木惇史の叩く世界1

太鼓の世界を私たちは知らなかった

6歳から和太鼓に触れ、13歳からドラムセットでファンクやR&Bを叩き、現在は両方でプロフェッショナルの打楽器奏者として活躍する御木惇史。ドラマーとしては伝説的なベース奏者、鈴木勲との共演や、現在では人気シンガーソングライターのマイケル金子のサポート、和楽器奏者としても全国を飛び回るという異色の存在と言えるだろう。

その御木が突如、SP盤でのリリースをするという。その中身はドラムと和太鼓を融合させて、景色を描き出す”雨と山”と小林岳五郎のキーボードとともに開放的な世界へ向かうグルーヴィな” Odyssey”。特殊セットで繰り出される世界は、誰もがイメージしたことのある情景とリンクしながら、音楽としては新しい地平を目指すサウンドに仕上がっている。もう彼とも10年ほどの付き合いになるが、改めてその世界を探ろうと、インタヴューの時間を設けてもらった

この時代にレコードを作る意味

ー去年ぐらいから本格的にストリーミングが主流になってきました。そこで敢えてSP盤という、レコードのシングル盤でリリースするって結構なことだと思うんですよね。

レコードを作るのはある意味、意思の表し方だと思うんですよね」。

ーなるほど。実際にストリーミングとかでは音楽を聴きますか?

そうですね。最近はストリーミングで音楽を聴いていると、再生した音楽に対して紐付けされた音楽を勧めてくるんですよね。

だから、これもそういった場所で世界中の変態打楽器奏者につながって行けたら面白い。そういう風なところにまだ可能性がある。ただ、レコードを作って良かったと思っている事は“こういう音質が好きなんだ”とかそういうことが、音楽に関わってくれる人にすぐ名刺がわりに伝わることです。でも配信をした場合“僕はこういう音楽が好きで”と言うような説明が必要になってくる。

後はDJとか、そういうところにいる人にたくさん聴いてもらいたいと思ってます。その中で現場で使ってもらえたら嬉しいし。まぁ、それでも1曲めの“雨と山”はいろいろビートも変わっちゃうし使いづらいかもしれないんですけど」。

ー今回まず聴きたかったのは最近の邦楽とジャズについてなんです。例えばTRI4THでベースを弾いている関谷君がやっている黒船、トランペッターの島祐介さんが小山流の三味線奏者とやっている和ジャズプロジェクトとか。


その中で御木さんはある意味ナチュラルボーンで邦楽とブラックミュージックに取り組んできたと思うんですが。

そうですね。和太鼓は6歳から。ドラムセットは13歳からです。実はライブでドラムと和太鼓をミックスしたセットを叩き始めたのは3~4年前からなんです。なので結構、最近ですよね。自分の中で和太鼓がある種の重荷になってる部分もある。

なんというか、他の和太鼓奏者と一緒にされたくないと言う気持ちもあったし、世間の和太鼓に対するイメージ、例えばふんどし締めて“セイヤー!”みたいな、そういうイメージを超えて自分の中で、例えばこういう世界もあると提示したい気持ちと四苦八苦している部分もあったし。

一方で、ドラムセットでファンクとかをやったりしてますが、そこに和太鼓を混ぜようとは思わなかったんですよね。結構別モノだったんです。でも、セッションなんかで、ドラムをやってると頭の上の方に和太鼓がなってるイメージがあったりするんですよ。でも、ただドラムだけやってきた人は、そういうイメージもわかないだろうし、実際に和太鼓を入れたりすることも難しいと思うんですよね。そういうことも考えると、それを実際に自分がやってみたら面白いかなと思ったんですよね」。

ーそこは隠さず出すのが始まりだったと?

そうです。だから自分の中では切り札的な感じなんですよね。和太鼓を入れた時に変に“色モノを使い始めたなぁ”と思われたくないし」。

和太鼓は一つ一つ違う

都心から高速をぶっ飛ばして箱根の山が見えてくると雲が急にかかってきてみたいな景色が見えてくるような“雨と山”には、現在のそこにある日本の風景が描かれている。少なくとも自分の中のそうした記憶とはがっちりと結びついている。邦楽とポップミュージックの現場では、和太鼓の設定はどうなっていくのか

1つ難しいのは電子楽器ではないところですよね。和太鼓にトリガーをつけてやってる人もいますが、それよりも生楽器としてそれをどう使っていくかというのがポイントです。

例えば、映画音楽とかであればうまくいく場合も多い。けれども、それをライブでやったときに面白さもあってバシッとかっこよくやるにはどう出していけるかが、楽しみなところでもありつつ、まだまだ可能性があるところだと思うんですよね。本当はこれをやったら師匠から怒られるくらいのところまでやったほうがいいんだろうけれども。

そういう意味で、1つ難しいのは師匠制度ですよね。後はチューニングです。チューニングは鋲で売っているのでほぼできません。だから例えば、レコーディングの現場で音程が決まってたりすると難しい。“これBbなんですけど”とか言われても現場ではもう合わせられない。一緒にやろうとしても、もし、そういう部分を気にするピアニストとはできなくなっちゃうんです。

あとロープでしめている太鼓は自分でチューニングもできるんですけど、すごい時間かかるんですよ。しかも大の大人が2人がかりで1日かけてやることになる。こういうのは締太鼓って言うんですけど、この締め上げと言う作業がドラムのチューニングとは比較できない。楽器のメンテナンスとして難しさがあるんですよ。そこが受け皿が広がらない一つの要因になってる。それで最近はボルト締め方式のものもあります。ただ、それは叩くと“キン!”とボルトが鳴るんですよ。それをよしと見るのかどうか。僕はそれは嫌だからボルトのは使ってないんですよ。でもロープ締めの太鼓の締め上げの作業は誰も教えてくれません。何なら教則ビデオもないし、お店でもやってくれない」。

締め太鼓。音を合わせるには、締め上げ技術を持つ太鼓奏者を探すしか無い。1日がかりで大人二人で行なう

個性を合わせるのではなくて、どう太鼓それぞれとつき合うのか

僕の中では、例えば人の性格って形成されるとなかなか変わらないじゃないですか。太鼓はそういうようなものなんですよ。そこにBbがどうとか、440khzとかそういう概念ではないんですよ。もう、もし音が合わないんだったら太鼓が”僕じゃない別の違う人呼んでくださいよ”みたいに言っちゃう感じなんですよね。太鼓ってそれぐらい不器用なものなんです。

“この国で生まれたこういうものなんだ、もう僕はこれです”みたいな。だからもし、西洋音楽的な概念で行くとボルト締めにしたほうがいいとかチューニングができるようにペグがついてるとかペダルをつけてティンパニみたいにしたほうがいいとか、そうなっちゃうじゃないですか。でもそういうことじゃない気が僕はするんですよね。そこでより本質を捉えた中で行かないと」。

ー場所が変わったり日が変わったりすれば音が変わっちゃいますよね。

そうそうそうそう!なんですよ!だからよくあるのは,

例えば僕が、そうですね、仮に山梨県の地元の太鼓グループに“太鼓があるんでそれをぜひ叩いてください!”と呼ばれたとします。

まあ、僕はそう言われても自分の太鼓を持ってくんですけど、実際に現地に行ってみて、自分の太鼓を叩くと“ドーン”というけれども、例えば現地調達したちょっと一回り大きいような太鼓があって、叩いてみると“コイーン”という音がしたりするんですよね。皮が張りたてだったりして倍音がきつかったりするんですよ。でも、そういう事は紹介してくれてる人も知らない。この太鼓がどんな音がしてどんな皮の張り方をしてるかとかはなかなかわからないんですよ。

紹介してくれる人にしてみたら“ここにペンあるからかけるでしょう”みたいな。もういきなり知らない人とセッションしてるみたいな感じで楽器と向き合うことになるんです。なかなか難しくて自分は“ドンドン、ドコドコ、ドンドン!”とやってるつもりでも、“トットコトコトコトット”見たいな感じになっちゃってたりして」。

太鼓は恐怖の対象でもあり、神でもある不思議な存在

僕が好きなので御陣乗太鼓というのがあるんですが、鬼の仮面をかぶって3、4人で1本の太鼓を叩くというやつなんですけども。ああゆうのとかも一体何なんでしょうね。それアフリカでもジャンべとかも、隣の村に“飯の時間だよ”と知らせたり“シカが捕れた”と知らせたり、すごく原始的なものだったりしますよね。だから表現するのに合っていたり、信仰心だったりとかそういう表現に使われてる。

太鼓はある意味、異様なんですよね。その異様さが時代が進んできて薄れてきてるのかなと思います。おばあちゃんに昔“雷が鳴ってるとおへそ出してると取られちゃうよ!”とかそういうのあったじゃないですか。そういうのは太鼓にもあって恐怖心とかがあるんですよ。もうそれはある意味、楽器は神様みたいなもので」。

現在は多様性を受け入れない、不寛容な社会になっている。寛容な社会というものは、とても社会システムに余裕がいる。つまり我々は豊かになっていないのかもしれない、そんなことを和太鼓の話を聞いて思わされた。

ドラマーはレコーディングの現場で厳密なピッチでチューニングをする。いや、ドラムはチューニングが当たり前に出来る楽器なのだ。しかし、和太鼓はそうはいかない。常に一台の目の前にある太鼓と向き合わなければ行けない世界なのだ。

これは当たり前のようでいて、現代人がすぐに代わりを求めることを考えると、とても考えさせる世界。

さてインタヴューは後編、『その2、世界のドラマーと未来編(10/26 夕方公開!)』へ続きます。

リンク:和太鼓は現代社会に語りかけるー御木惇史の叩く世界2

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