ジョグジャカルタへ
前回の続きである。
インドネシアはたくさんの島からなる他民族国家だ。
日本人が大好きなバリ島、首都ジャカルタのあるジャワ島、コーヒー栽培などでも有名なスマトラ島、ニューギニア島の西側半分、カリマンタン島(マレーシアではボルネオ島)の南半分などが主に大きな島。
そのジャワ島の古い首都がジョグジャカルタだ。
ジョグジャ、ヨグジャなど地元の人は略す。また未だに王族がいて宮廷に行くとジャワスタイルのガムランを演奏している。この楽団は4種類あり東西南北のスペースで演奏している。女性の歌が入っていたり、子供が入っていたりとそれぞれが特徴があり、宮殿の真ん中で王様がそれぞれの音を楽しむという。
※ジャワのガムランはバリのものよりテンポがゆったりしている
また王族に対してジョグジャカルタの市民は大きな敬意を持って接しており、宮廷内は靴を脱ぎ、頭を下げながら横切る、もちろん帽子はどんなに炎天下でも脱ぐ。観光者に解放しているが大きな声、走るなどの行為は御法度で、すごく怒られる。怒られるだけで済むんだろうかというぐらいの雰囲気。
また世界遺産も二つあり、観光資源も豊富だ。
感覚的には日本の奈良、京都に近い感覚だろうか。
人口は200万人。物価も安い。
また学術芸術都市として、大学では現代アートなども大きなスペースで展示してあり、それがわりと面白かったりする。
イスラム国家で東ティモールの問題等、支配的なイメージを行くまでは持っていたが、もっと自由に発言しアピールする場があり、政治的なメッセージに対しても日本のように閉じている印象が無い。
芸術に対してもすごく熱心で、そうしたことにリソースを割くイメージがなく、貧困な発展途上国というイメージだったがそうではないようだ。
どちらかというと食は豊富で、食べるに困るということではないので、生活を工夫してより楽しくしようということなのではないかと感じた。
もちろん渋滞だらけでインフラや住居などはギリギリな感じはするのだが日本人の持つイメージはすこしバイアスがあって、イマイチ東南アジアの生活イメージに誤解があるのかもなと思った。
写真のボロブドゥール遺跡などはラーマーヤナの物語を全て彫刻し仏像を曼荼羅に見立てて配置した遺跡なのだが、その発想の大胆さや緻密さなども含め芸術性への感心度は非常に高い。
そうした背景がある地域ということなのだ
ナガヨクジャズへ
この時、呼ばれていったフェスは
『ngayog Jazz』というフェスティバルだ。
最初はさっぱり読めないし、出演者も知らないし不安しかなかったが、行ってわかることもあるだろうとバリ島経由でジョグジャカルタへ乗り込んだ。
会場につくとなんと農村。
水牛がいるし、鶏が会場内を闊歩。
「ここがメインステージ」という横は墓場、、、、。
「これは記事にならないかも、、、」と衝撃(笑)。
人もいないし、一応装飾はあるけど村祭りじゃないのこれは!と。
飛行機乗り継いできてなんということだと思った。
メインステージ横には牛舎があって足を踏み外すと牛糞に落ちる、反対側は墓場、、、、。
しかし数時間後には凄まじい人、不思議な演奏陣ですごいことになった。
このフェスは毎年場所を変えて開催され、ジョグジャカルタ内の様々なロケーションで開催されているという。2010年に火山が噴火し村が潰れるという自然災害後に主催者のベーシスト(世田谷梅が丘に在住経験あり)が芸術の社会貢献、フェスの社会性、文化と生活などをコンセプトに火山の麓で開催したのが始まりだ。
プランバナン寺院群が見えるロケーションなど、様々な場所での文化発信などもコンセプトにしている。
ステージはこの時は6カ所でこの農村全体を使い、農村の村民はボランティアとしてフェスの運営に関わることでその経済効果とともに事業運営やネットワーク作りにも生かせるという仕様になっている。
また地域の特性にも敬意を払い、ガムランなどの伝統音楽のステージも用意されていて、お互いが敬意を持って接しているところは非常に興味深い。
また観客によるSNSでのアップを推奨しており、ミュージシャンはプロモーションの場として有効に使う。
皆、CDなどを買うということはあまりないというインドネシアだがyoutubeなどで別の集金をし、マネタイズする方向へ動いているところも興味深いところだった。
そして出てくる未知のバンドたち
6ステージあるため、出てくるアクトの数も一日に40近くある。わずかにボルネオで観たニタ・アースティンのバンドのみ知っている。
最初の時間は大学のジャズ研みたいなグループが多く、どうすればよいのかわからなかったが、アグスに教えを乞うことに。
実際にその後観て興味深いものを紹介していく。
Three Songは一番上の兄がベース、真ん中がドラム、そしてギターが当時12歳。一番上の兄も17歳で高校生。そして父親がキーボードというフュージョンバンド。話だけ聴いて「ああ、そういうのね」とキワモノ扱いしてたが観てビックリ。
うまい。テクニック的にも音楽的にも。
ギターの子も上手いのだがドラムの真ん中の子がしなやかな良いグルーヴを出す。sakae drumのコンペのファイナルまで残ったらしい。お兄さんはマーカス・ミラーとかヴィクター・ウッテンを研究してそうな感じ。
Ina Ladysはインドネシアの女性スタジオミュージシャンで結成したグループ。
なんでもあり感満載でゲストは男性もあり、メンバーも割と流動的なんだそうで。動画は謎のアジアンポップスだけど、フェスで見た時はいきなりアドリブでぶち切れたりしてた。
Gustu Brahmantaはニタ・アースティンのバンドでこの時、ドラムを叩いていたのだが、シンプルなドラムセットの傍らにガムランのセットを一部用意して、音色やプレイに変化をつけていた。
ちょうどその時に2013年にリリースした自身のアルバムをくれて、それがすごく独特な作品だ。バリ島出身でバリの芸術学校に通っていたそうだ。
サイト内でも他の動画が観られるが普通にポップミュージックも演奏している。
その他、たくさんのCDやCDーRを貰った。フリージャズもあるし、独特なものもあるし興味深い。
それでインドネシアでジャムセッション
実はこの旅、いろいろオチが会って、飛行機の予約を先方がミスって予定通り帰れなくなってしまった。
先方も頑張ってくれたが丁度日本の連休明けと重なり飛行機がフルブッキング。まあ騒いでもしょうがないのでいろいろ連れて行ってもらった
それで前回も触れたジャズのコミュニティでセッションがあるというので観に行くことに。
学校みたいなところの一角に機材を用意して野外でセッションしてる!
上手いプレイヤーも始めたばかりのような人もいるが、ここで顔を合わせてつながりを作っているようだ。丁度フェスの後なので他の地域のコミュニティに所属するミュージシャンも来ていて楽しそうだった。例えばsmallsとかNYのバキバキな感じはもちろんないが、ただ聴きに来ている人もいて、大学のジャズ研の小規模イベントみたいな感じといえば伝わるだろうか。
ただ、こうした場があるということは入り口を作ることでもあり、なかなか面白い。
ちなみになぜかここで2曲参加させられました(笑)。
これ以来、少しインドネシア方面のジャズに対する感心が開かれている。
現状は全体的な嗜好としてはエネルギッシュでダンサブルな嗜好が観られる。そのあたりはガムランなどの影響もあるだろうし、そうした自国の伝統音楽が気軽に触れられる側面もあるようだ。また自由な表現に対して開かれている。
コミュニティなどが出来始めたのもここ10年くらいの話で、まだ歴史は浅いが、演奏技量などが全体的にもっと底上げされていく気配も強い。
引き続き注目していきたい。
文・写真:鈴木りゅうた
取材協力:インドネシア観光局
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