カレーの新しい潮流

カレーニューウェーヴ!

今年の2月くらいに塩分摂取過多を気にかけてラーメンを控えるようになった。今まではラーメン屋を見かけたらとりあえず入ってチェックする、というぐらいに食べていた。なんというか好き嫌いではなくてそれは義務感なのである。

「ラーメン屋があればとりあえず確認する」という感じ。ただそれをまとめて発表するとかそういうことではなく、ほんとにただの知的好奇心を満足させるためだけの行為だったと言える。またそれは札幌でのラーメン文化の影響かもしれない。

そこでカレーだ。

カレーは札幌でも90年代半ばからのスープカレームーブメントがあり、たぶん東京へも2000年代に流入している。最近は都内なら当たり前にスープカレーの看板を掲げた店を見る。また2000年代はインド・ネパール系の方々がインド料理屋さんを日本に合わせて都内のいろんな場所に出店していた。

という流れくらいは把握している。あとカレーライスにいたってははっきり言って子供の頃からの好物なのです。割と身長が高めの私ですが、「なんでそんなに大きくなったんですか?牛乳?」という問いに「カレーばかり食べてたからです」と答えるくらい好き。ただし、外食ではなく自作派。しかもジャ○カレーとか熟○カレーなんかのルーを買って来てちょっと具に工夫するくらいのものなのでカレーマニアからは「なめんな!」と怒られるであろう。

私の趣向はそんくらい。

それで東京に出て来てからの友人でカレーをなぜか日課として食べ続けている男がいて、彼はなんとか毎日カレーを様々な形態で接種している。もちろんそれは外食というかたちでも行なわれていて様々な店への来訪もブログで発信している。それでいろいろな店があるんだなということはぼんやりと知っていた。

それがこの2月、ラーメンをやめて外での外食の選択肢が突如狭まった。それでなんとなくカレーを食べに行くようになった。渋谷エリアに昼時にいることが多い状況だったのだが、「自分が今まで知っているものと何かが違う店がいくつかある」ということに気づいた。これに気づいたのはまた別の友人に連れて行かれたからであるのだが、明らかに何か違うのである。

・スパイスをベースにした味を作り
・営業スタイルがクオリティと生活意識
・健康志向
・自由志向

こうしたお店が増えていることに気づいた。時には無理に仕込みを増やさなかったり、営業時間が短い、毎日やらない、夜は別の店、立地は考慮しない、独自の哲学などなんというかバラエティがあって「うわ!なんだこれは!完全にカレー業界なにか始まってるじゃないか!」と衝撃を受けたのである。

自身の出遅れ感を多いに感じつつ、これを

『カレーニューウェーブ』

として観測することが楽しくなってしまった。なんというかたぶん今一番ムーブメントが起きている食のジャンルではないのかとかなりの衝撃だったのである。

自分としては2005年くらいからのスペシャルティコーヒーの動き以来の衝撃だったのであった。それでなんとなくSNSなんかで「カレーのニューウェーブだ!」なんて勢いで写真を上げたりしていたのである。

カレーニューウェーヴの定義はこれから通な人たちに揉んでもらって固めるとして(笑)、なんて考えていたら雑誌ポパイでパクられてた(笑)。

ということでニューウェーブを感じるお店をいくつか観測した範囲で紹介しておきたい。


カレーニューウェーブ的な始まりはたぶん新宿の草枕、きんもち、そして渋谷のチリチリなどがスタートだろうか。このあたりの店は以前行ったことがあり、「ああこういうサラっとしたやつね」ぐらいの認識だった。つまり洞察が甘い私。このあたりの新しさに気づくのに時間かかりすぎ(笑)


この半年の観測でニューウェーブを確信した店

それがこの『シャナイア』

住宅街の奥深くで住居を改造して営業しており、まさかこんなところにというのが都会で味わえる立地。つまるところ味だけで勝負している。ここ最近はどうやら「孤独のグルメ」に出てしまったらしく、昼はもう待つ覚悟がないと入れない。待つ覚悟があってももしかしたらありつけないかもしれない。

とにかくネコ押しの内装とスパイスをバランス良く用いたスープカレーがとにかく美味い。食べ終わった後のテンションが自然と上がる。

3月当初でも住宅街に人だまりが出来るという状況に「これはカレー始まっている」という確信めいたものを感じた


二毛作の小箱「あしたの箱」

こちらは最近雑誌の常連で、ポパイに乗った結果すぐ売り切れる店に。

大阪からやってきた店主がチキンカレーのみで攻める。

上品な味付け、十分なスパイシーさでも、辛くても食べられる。鶏肉は骨までしゃぶる。酢漬けのたまねぎが果物でも食べてるようにジューシーな甘さでついつい食べ過ぎて申し訳ない。

大阪ではカレーが流行っていて音楽イベントでカレー出すのが普通らしくうらやましい。小箱ゆえの一体感、ライスの炊きあがりも完璧。二毛作でも上手いもんは上手い、カレーなんなんだというきっかけの店。たぶん週4営業


学芸大学から恵比寿の神社裏2階のマニアックな場所へ移って来た人気店『Sync』

知る人ぞ知る感じだが、なんと札幌の西18丁目にあるカレー屋『ミルチ』インスパイアというローカルなネタが展開。そしてオーナーの森さんは後志出身でほぼ同郷。インテリがゆえに放浪しちゃうという天才系の人。トークも面白いが果樹園を継ぎに北海道へ戻り、今は二代目の方が。

ワンオペ問答無用、先払いのラフさも最高。味も派手さはないが毎日たべれちゃう。セルフ感満載の感じがまた良し。


夜は恵比寿で人気のバー夜木。ここは東北仙台の人気レストランが経営している東北の食材をつかったバーで近くにあるレストランARMAの姉妹店。新橋にあるVapurという高架下の上手い蒸気バルでたまに演奏させてもらっていたので、少し縁がある。

昼間は『ボイシャキ』として営業。バングラディッシュ人シェフによるカレー。なぜかハンドドリップコーヒーをカウンターで若い男性が出している。


激戦区渋谷東に突如登場した『Good Luck Curry』

手作りの内装ながらほどよく抜いてあり、洒落ている作りに「あー、オシャレなそれ系ね〜」と侮るなかれ、ワンプレート内に絶妙の調和。マッシュポテト、ココナッツ、漬け物、そして主役のカレーは週代わりで2種類が交代していく。つい1週間のローテーションで入れてしまうのである。

どうやらもともとフレンチ出身の方がやっている模様。侮り難い新星の登場だ。


他にも上手い店はある。

つい行ってしまう店が恵比寿の文化発信基地として歴史ある吉柳のカレー専門店『吉柳スパイス研究所』。ガーデンプレイスのほど近く、アジアの屋台ぐらいのざっくりした店作りながら、出てくるカレーはうまい、熱い!

なんと知人のラッパーが切り盛り。ヤバい。ヤバ過ぎて写真がない(笑)。

こうした動きを観測すると都内、特に新宿を中心に中央線沿線を中心に広がっているカレーの動き。

ライフスタイルやアティチュードもスパイスでごった混ぜになって蠢いていて世代や人種、カテゴリーなど関係なく、各々のスタイルが乱立している。

ヤンキー的なラーメン文化とは違う、ネオヒッピー、ジェネレーションX的な感覚。アンチテーゼと流行がミックスされているカレーの動きを今後も注意深く、また美味しく観測していくつもりである。

 

(文・写真:鈴木りゅうた)

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