カレー界の入り口に立ってその深さにめまいの巻

勃興するカレーインディペンデント

そもそも、カレーはあまりに日常的だ。

なのでそんなにカレーが一つのカルチャーとして、場合によってはエンターテイメントとして機能しているなんて思いもしなかった。

レベルに合わせていくらでも選べる。いや、むしろ距離が近過ぎて選べなかったのかもしれない。たとえばコンビニにだってあるし、レトルトの歴史は1962年の大塚食品からとかなり古い。今ある既存のカレー屋さんと比べても老舗の部類に入ってくる。

そうした流れの中で異常に多様性を受容した存在でもある。よくある“〜道”的な何かを超えて、むしろそうした求道する世界をまるっと飲込んで、とても広く横たわっている。

これがふと手をその中に入れてみると無限に広がっていて異常な魅力があることに気づいた。

そうしたことが昨今のブームの始まりなのだろう。

例えばミュージシャン界隈でもカレーは熱い支持を得ている。

それは[食べる]行為から[作る]行為への移行さえも飲込んでいた。


365Curryのイベントへ

実は365カリーこと南場四呂右こと某山口君のことはもう古いこと知っている。単純に昔のバイト仲間で、当時はバンドやったり役者をやったりして表現活動をする人というのが私の認識だ。いきなり富士山にハマったり、マラソンしまくってたりもするしカテゴリの曖昧な男。たまに話すとなぜか哲学的な世界を模索し始めたりして興味深い人物という認識だ。

たぶん彼がギリギリカレーを毎日食べ始める前から知っているのだが、その企画の当時はなんというか『ギネスに挑戦!』とか電波少年的毎日カレー生活というノリだったと思う。

たぶんに当時一般化したブログサービスの影響もあるだろう。なんというかSNS前夜。

それが1年では終わらず、4年目くらいからこちらの認識がびっくり人間からカレーのプロみたいな認識に代わり、気づくと自作したりし始めているし、カレーについて聞くととても慎重に言葉を選びつつ答えてくれる、専門家の香りが漂い始めたのだった。

自分自身はカレーの新しい潮流に気づくのは今年の2月のことなのだが、今年の4月にカレーとは関係ない場所で彼と話をする機会があり、新しいカレーの世界の広がりについての一端をより深く知ることとなった。

その彼がカレー連食10年を記念してイベントを開く、ついては自身でカレーを作って提供するという。これはその世界の一端を知る良い機会、365カレーの成果を知るよい機会でもあると勇んで参加したのだった

2017年8月5日に初台の名店『和魂印才たんどーる』を貸し切って行なわれた『365カレー(∞)』の10周年イベント。

この日はとても蒸し暑い中に某山口氏の他にも

たんどーるの塚本氏、話題の流しカレー屋and Curryのゆきな氏、ラムバサダーとしても活動するスパイスハンターのシャンカールノグチ氏もゲストシェフとして参加。『365カレーとスペシャル華麗な仲間たち』と題し現在進行系のカレー最前線イベントになっていた。

こうしたイベントに行く機会はなかったのだが、どこで聞き付けたのかフリーのカレーグルメなども混ざっていて、程よいイベント感をおしながきが煽る。飲食イベントって面白い存在なんだな、これ。

音楽のイベントには多数行くけど、世界は広い。

お品書き

では主観的な所感を写真とともにつまびらかにしていく。

Photo by T.Nakano

『10周年おめでとう10種の野菜サラダ』

サラダはたんどーるの人気メニュー。というかセットについてくるがこのドレッシングがうまい。神がかっている。なにより野菜とドレッシング、そしてパパド(せんべいみたいなやつ)の食感の組合わせが最高のアンサンブル。

Photo By T.Nakano

冷製 和ッサムスープ byたんどーる

和寒という地名が北海道にあるが関係はない(はず)。

ラッサムスープはトマトベースの程よい酸、それがこの日は蒸し暑かったのでとてもうま過ぎたのだった。

そしてワケギなどが使われていたり、出汁も感じる、和風エッセンス。

Photo by T.Nakano

左から『and Curryの10種の野菜カレー』『シャンカールノグチのラムコフタコルマ』

and CURRYは野菜だけで攻めつつスパイスのハーモニー、シャンカールノグチ氏はバキっとスパイス、そしてラムとお二方ともそれぞれのスペシャルティを繰り出す。バランス無視で食べてしまい、来ていた知り合いに「ペースおかしいっすよ(笑)」と指摘を受ける。

『鶏肉の梅カレー』by たんどーる

たんどーるの看板メニューを追加オーダー。

まるでトマトのように梅干しを使い、新しい和食の領域。

これはすごい。キワモノだと思ってる人は必ず試すべき料理。完成度、コンセプト、チャレンジ精神どれも凄まじいものがある。そりゃ話題になるわ、これは。

Photo By T.Nakano

ワンプレート上に左上から365Curryの『大豆キーマカレー』『たんどーる直伝茄子の生姜焼き』、たんどーるの『大根と人参と高野豆腐のスパイス煮』

そしてライスは365Curryによる『ほんのりスパイシー雑炊おこわ』

まず付け合わせ達のレベルの高さ。「高級おばんざいかよ、君たち」と言いたくなった。

そしてカレーイベントのヤバさをこのあたりでシミジミしつつ、カレーなしでもバクバクいけそうなおこわ。

もはや素人の仕事ではなかったよ。「君は何者だい?」と問いただしたい。

365カレー曰く「何度も炊き込み具合は試した」というが、これがまたどのカレーとも調和していてどういうことなのだろうか、これは。

無法だが階層はある、それがカレーの世界なのだろうか。

だしという世界があるが、それと同じようにスパイスという世界が存在していて、日本でそれが結びついている、そんな感覚をうけた。

Photo By T.Nakano

『クランベリーチョコナン』Byたんどーる

ナンはデザートにもなる。うまいでしょ、これは。しかもちょっとトロっとしたチョコのうまさったらない。

追加したスパイスチャイ。

異常なチルアウト感。無限を感じる飲み物。

これはたんどーるに来たらマストですね。


はっきり言って今のカレーシーンに関して言えば私はにわかですが、そんなことはどうでもよくて想像以上に自由で深い、そしてフレンドリーな世界が広がっていることを感じた夜だった。

カレーに掛ける(ごはんとかにではなくて)という意味ではプロアマは関係なく本気の人たち、そういうライフスタイルが勃興しているのも面白い。この日は貪り食べたためほぼ写真は借り物だが、撮影した中野氏はカレーマニアが興じてイベントをやったりしている。

 

そうしたつながりを作る食べ物という意味でもカレーの柔軟性に感じるものがある。例えば国民食と言われるラーメンにはそういうことを感じる場面は少なく、またあまり自分自身も大好きだが求めていないかもしれない。

この日のイベントも食べた人、提供した人ともに一種のカタルシスが終了後に感じられた

いろいろなきっかけをくれた365curryに感謝しつつ、続けて今後もカレーウオッチをしていきたい。

(文/鈴木りゅうた)

関連リンク:

365Curryこと南場四呂右のブログ  365Curry(∞)

初台の和と印を結ぶカレー店
『和魂印才たんどーる』

ゆきな氏による流しのカレー
and Curry

ラムバサダーかつ最強スパイスハンター
シャンカールノグチ

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