ロナルド・ブルーナーjrのソロプロジェクトを見る

LAの今

ロナルド・ブルーナーJrはまさに音楽一家の長兄。

父のロナルドSrはテンプテーションズなどもサポートしたドラマー、弟はサンダーキャットことスティーブン、さらにthe internetsのキーボーディスト、ジャミールも弟。

私が最初に映像で見たのは、たぶんマーカス・ミラーのyoutube映像とかそんな感じだったと思われます。パワフルでグルーヴのポケットもあって、肉体の快感原則にそった気持ちのいいドラム。録音ではケニー・ギャレットにピックアップされている。これが18歳くらいのことというからかなり早熟タイプのミュージシャンで、その後スタンリー・クラーク、ジョージ・デューク、そしてプリンスまでが彼をドラマーとして迎えている。

スイサイダル・テンデンシーズにも在籍経験があり、ロックテイストに対しても十分理解がある。スイサイダルテンデンシーズはハードコアパンクとかオルタナティヴパンクの元祖的存在だけれども、実は昔からブラックミュージック全般の歴史をしっかり理解したメンバーが多いということは最近の音楽ファンも知っていることなのではないだろうか。

音楽センスとしてはゴッタ煮要素が強く、全般的にスピード感のある音楽を演奏しているが、ジャズを基本に演奏してきたというようなギタリストだったり、ゴリゴリのファンクが好きというようなメンバーが多い。

主にスケーターに支持されてメロコアなどと同様にスケーターロックの走りとしてカリスマ的な存在でもある。マイク・ミューアのガチャガチャした声は好き嫌いが分かれるところだろう。

現メタリカのロバート・トゥルージロもスイサイダルテンデンシーズのメンバーで、二人が中心でやっていたインフェクシャスグルーヴスがバカファンク感満載でよく聴いていたが、そうしたジャンル無用な感じのスタイルは昔からある。スイサイダル・テンデンシーズはLAでのその温床的存在と言えるだろう。

ちなみにロナルドの脱退後にサンダーキャットもスイサイダル・テンデンシーズにけっこう長く在籍している。メタルファン的な話で言えば元スレイヤーのデイブ・ロンバートが現ドラマー。このあたりのベイエリアのゴチャゴチャぶりはNYの感じとはまた違う、なんというかマッチョでワイルド、加えてパワー系の不良感。最近人気のカマシ・ワシントンあたりにあるザラついた雰囲気は、LAのはみ出したブラックミュージック要素の共通した特徴だと思う。

それは例えばフライングロータスにもある、ある種の暴力的な荒涼とした雰囲気として一つに括りたい誘惑にかられる。ここ3年くらいLAミュージックコミュニティというようなニュアンスで語られるが、昔のGファンクにもあったムードでこれが街の空気感なのだろうか。実はLAには行ったことがないのでなんとも言えない。

ロナルド・ブルーナーJrもこの一角にいる存在感を持つが、一方で音楽エリート感も見える。


ビッグネームのサポートとして充分なキャリアを持つロナルドがこの春に自身の名義でアルバムをリリースしている。

「Triumph」と命名されたアルバムは一ヶ月間スタジオを借り切って録音された。

サンダーキャット、ジャミール・ブルーナー、そしてカマシ・ワシントンやブランドン・コールマンなどこのあたりの仲間内が大集合している。本人いわくものすごい数の楽曲を録音したそうだ。

それを抜粋したとのこと。

内容は歌もの。炸裂するドラムとギラついたサウンドプロダクションがとてもエネルギッシュな内容でブラックロック的要素も強く感じさせる。一方で安易に「ジャズとヒップホップが〜」とか「ゴスペル、R&Bの要素を」とか言い難い、一つの個性的な音楽として組み上がっている雰囲気がある。

確かに言えることはとてもパワフルな作品で、LAの音楽はここまで来たかと思った。何かを混ぜ合わせるということを意識したコンセプチャルな感じがなく、すべてを並列に食べて消化されている。何が言いたいかといえば例えばこの作品やサンダーキャットの作品がいったい何にカテゴリーされるかというのはもうよくわからない。ジャンルわけされたレコード店の棚のどこにでも置いてある感じなのだ。

こういう現象は90年代のミクスチャーロック時代、2000年代のジャムバンド時代、そして今と3回目だがだんだんある意味、意図的なコンセプチャルなことではなくなっていっているのが象徴的だ。生演奏を基本に置くミュージシャン達は今、メジャーレーベルの衰退によって、より外部のプロデュースに縛られない状況に音楽的には進んでいる。やりたいことをやって、その後にセールス、あるいは最初から支持者をファンドで募るという時代になっていることも影響しているのではないだろうか。


何度も来日しているというロナルドだが、自らのプロジェクトでは初めてだ。

今回はブルーノート東京のあとコットンクラブで2日。コットンクラブの1日目に行って来た。

この時点でブルーノートでは歌いまくった、という話だったのだがアルバムに合わせてそういう方向で行くのかと思っていた。

来日メンバーは
Ronald Bruner, Jr. (ds,vo)
Dennis Hamm (key)
Randy Emata (key)
Samir Moulay (g)
Matthew Taylor (b)
Lemar Carter (ds)

アルバムの録音に参加しているのはRandy Emataのみ。

会場はいつになく若めの客層でちょっと賑やかな雰囲気だ。

メンバーが登場すると、なんというかLAの悪そうな集団って感じでロナルドが体格もよく、ボスキャラ感満載。バンダナにレイバンのサングラスで重たそうなネックレス、リストバンドって(笑)。

そう、90年代のヤンキーじゃないかと面白かった。

演奏はパワフルなフュージョンで展開。二人のキーボーディスト、ギタリストがガンガン弾きまくって、ロナルドは煽るし、前へガンガン出てくる。まるでマシンガンをぶっ放しているような勢いだ。

そして出音がでかい。それでも始まると上手のRandy EmataがPAにモニターの音を上げろと指示。つづけてロナルドもガンガン上げろと指示。続いてベース、ギター…全員(笑)。結局下手のDennis Hammだけスネアとハイハットを下げるよう頼んでいた。たぶん自分がみたコットンクラヴのライヴでは最大の出音。

楽曲はジェフ・ベックやジョージ・デュークなどをガンガン決める。サポートドラマーを入れてガンガンやる。

なんというかガンガン叩くので非常に気持ちがいい。ストレス解消。サウンドの抜けも気持ちがよく、あれだけ音がデカイのにうるさくないのが技術。音色への意識が高く、動きを見ているとまるでスティックの先まで神経が通っているようだった。そしてスリーバスというセット。そしてこのパワー感は往年のデニス・チェンバースを思い出させる。もっともデニスのほうがもっと手数が詰まっているが。

サポートのドラマーも素晴らしく、シンプルなセットとパッドを組み合わせて面白いセットを組み、気持ちよいグルーヴを醸し出していた。

そしてどうやら毎回ほぼ違うセットで演奏していたらしい。

これは今後、まだまだ活躍の幅を広げていきそうだなと思ったと同時にLAのこのあたりのコミュニティはこれから良質な音楽を量産してきそうな気配を感じた。フライングロータスやサンダーキャット、ケンドリック・ラマー、カマシ・ワシントンなどブラックミュージックの拡張に一役買っているLAだが、核になるこうした才気あふれるドラマーがおり、モチベーションが高いこの状況。この3年ぐらいはもっともっと盛り上がりそうだと思わせるライヴだった。

文・写真:鈴木りゅうた

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