ピーター・バーンスタイン!

60年代生まれのミュージシャンたち

60年代後半生まれ世代のミュージシャンたちが90年代に進出し今のジャズシーンに繋がる礎を創っている。

カート・ローゼンウインケルブラッド・メルドージョシュア・レッドマンブライアン・ブレイドクリスチャン・マクブライドなどなど。層も厚く、オーセンティックな作品から突如としてチャレンジ精神溢れる作品を世に出したり。

この時期、ジャズは音楽シーン全体に対する影響はあまり大きくはなかったが、それがまた富士山の伏流水のように貴重な水脈となった。

1967年NY生まれ。49歳になるバーンスタインもこの世代のミュージシャンになる。演奏は堅牢。音数で攻めるタイプではないが、その音選びの上手さは思わず唸る。正統派感を失わず、跳躍感溢れる演奏。かなりモダンな音使いをするにも関わらずとてもオーセンティックな香りはなんというかぐっと来る。

粘り強い腰の効いた音色だがブルージィになり過ぎない独特なセンス、少ない音でもアンサンブルに強烈に効果を与えるバーンスタインのプレイは隠れファンが多い。彼のクレジットはアルバムを買うときの安心品質保証とでもいうような感覚で、危険な感じは薄いが高いレベルでのアンサンブルを約束してくれているような気になるのだ。

ジム・ホールにニュースクール時代に発見され、活動の拡大をしていく。

その後、ルー・ドナルドソンのバンドにレギュラー入り。その他ラリー・ゴールディングスとビル・スチュワートのトリオ、ジミー・コブ、ジョシュア・レッドマン、そしてサム・ヤエルとのオルガントリオは途中、バーンスタインからジョシュアに交代しバーンスタインが抜けた後はエラスティックバンドやyaya3などに変化したりしている。

下のyoutubeは少し長いがその分、聞き応えは十分なラリー・ゴールディングスとのトリオ。


ピーターのライヴは初めて見たのは2002年にニューヨークのSmokeでエリック・アレキサンダーのバンドだった。当時、自分の好みがどちらかというと突飛なタイプが好きなのでエフェクトなし、ギミックは基本なしのピーターのスタイルは”うむ!”という感じで巧者ぶりは認めるが、、、、という感じだった。参加作品も聴いてはいたがアンサンブルに入り込んでいる感じでまだ若い耳にはそこまで響いていなかったのだろう。

が、あとからジワッと来る感じで程よく太くラインを描いていた様子が頭に残っていて、結局じわじわとその後愛聴するようになっていった。

サム・ヤエルとの1999年のトリオ作品『In the Blink of eye』などはよく聴いた。これはNuxosというクラシックメインのレーベルから出ていて、ドラムがブライアン・ブレイドというメンバー。気づけばじわりとフェイバリットなギタリストなのである。

そのピーターがトリオで来日、しかも東京は1日だけという公演日程だったのだが、ビル・フリゼールの来日直後ということもあり、どうかなと思っていた。

もちろん私は見れるライヴは全部みたいのだが、スケジュールや経済状況など諸々の条件もある。しかしその数日前に別のライヴ会場で偶然出会った某音楽誌の編集さんとギタリスト談義になり「いやー僕、実は熱烈なピーター・バーンスタインのファンでして」ということからバーンスタインについて語ったことでふと数作振返って聴いたらちょっと見とかないとという音楽フリークな流れ。そこからは話が早い(笑)。


急遽ライヴへ!

シンプルなステージ

来日メンバーはダグ・ウエイス(ベース)、ビリー・ドラモンド(ドラム)という渋いメンバー。クリスクロス感溢れるオーセンティックなメンツが揃っていた。

今回の来日はモンクトリビュートで全曲モンクの楽曲で構成された。

どうやらステージごとで楽曲を変えたようだが私が観た1ステは”PANNONICA”やIn Walk Budなどを演奏していた。

なんというかこの人は画数が少ない。その分、力強い線を洗練して書く書道家のよう。太い弦をしっかり捉えて、味わい深く弾くのである。

体つきは背が低く、顎のがっしりした体系、そして体のバランスに比して手がドンとしている感じでギュっと指板を押さえる感じがしっかりとしたサスティンとアタック感の安定を生んでいるのだろう。それが洗練された音選びを支えている。

足下にエフェクトはなく、音色の変化はすべてピッキングのニュアンスのみで凄まじい表現力を見せつけてくるのだ。跳躍のある音使いはみせるがそうしたギターの指板と右手のニュアンスだけで今の時代に勝負しているのはジャズギターの保存派的には当然なのだろうが、ニューヨークのあの環境ではすごく独特に、ある意味頑固にスタイルを築いてきた。

ジム・ホールの薫陶を受けたギタリストでもあるバーンスタインだが、同じくジムからの影響の大きいビル・フリゼールとはまた違う方向にいて、しかも二人ともジムの影響下に留まっていない。逆にそこがジム・ホールの偉大さかもしれない。二人は音色へのアプローチは全く違うようでピッキングのニュアンスという点では共通、またフレーズも音を厳選している点では共通するが配列の方向性は違う。

そうした点も非常に興味深かった。


バーンスタインはこの2017年にSmokeのレーベルから1994年にクリスクロスからリリースした『Signs of life』のメンバーをリユニオンしてライヴアルバムをリリースした。2枚組でたっぷり堪能できる内容だがメンバーも素晴らしい。ブラッド・メルドー、クリスチャン・マクブライド、グレッグ・ハッチンソン。

オーセンティックなジャズでもまだまだ行ける、そんな気がする。しかもみんな20年経ち、円熟期に差し掛かりつつある演奏。

今、新世代がもてはやされていて、そうした演奏は私も大好きだが、ピーター・バーンスタインのようなジャズ直球派も素晴らしい。

うむ、リスナーとしては最高にいい時代だ。

(取材・文:鈴木りゅうた)

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