吉岡大輔&The Expressは東横線沿線の人気者

ジャズドラマー

ドラマーの吉岡君は広島出身で私と同い年。

最初に会ったのはたぶんRoomでやっていたフューチャージャズ喫茶Sofaというイベント。これは当初はレアなレコードなどをソファに座って聴こうというクラブイベントだったそうだ。だが私が東京へ移り住んで毎週第4水曜日のこのイベントに顔を出すようになってからは完全にミュージシャンだらけのクラブミュージックマナーのジャムセッションイベントになっていた。

このイベントは今では有名になったミュージシャンやその当時からメジャーで活躍していた人も来ていたし、オーナーの沖野修也さんもよくいらっしゃってお話をしたりもした。

そのThe Roomは今はクラブの概念を越えて”Tamariba”として今も最新情報の発信に一役買っている。


とにかくそんな感じで顔見知りなわけで、他にもいろんなセッションで会ったり、ライヴで見たりした。

またトランぺッター類家心平君のバンドでも吉岡君がドラムを叩いている。

他にも金子雄太さんのオルガントリオなど本当にいろいろやっていてたぶん結構忙しいと思う。だが積極的にジャムセッションに参加するだけでなく、主催もしていて、かつ自分のバンドであるFunky Expressでのライヴも定期的に続けていて継続の人だ。

またふとした音楽談義での発言が「この人、いろいろチェックしてる人だな〜」と思わせてとにかく分け隔てなく音楽愛のある人というのが生意気ながら私の吉岡君への人物評である。

それで何年も前から「セッション来て〜」とか「ライヴに来て〜」とフレンドリーにお誘いを頂いていたのだった。

昨年末にとあるライブ会場でバンド名をThe Expressに改名したCDが売っていたので購入(俺、律儀)。

長く続けているバンドがどんな音楽をその結果やっているのか単純に興味があった。そういう時はやはり熱量をかけて作ったアルバムを聴くというのはすごくよいと思う。


作品はThe Expressで長年トランぺッターとしてフロントを飾る島祐介さんも深く関わる等々力ジャズレコードからのリリース。

島さんは最近、特に自らの作品を活発にリリースしている他、いろいろなところに呼ばれてトランペットやフリューゲルホンを吹いている人気トランぺッターだ。

もう一人フロントには竹内直さんをテナーに迎えている。竹内さんはまだ札幌にいた時にKANKAWAさんのバンドで吹いているのを見たのが最初。割と最近のことと思っていたがそれがもう20年近く前のこと。いつも何かを探しているストイックで思索的なプレイが印象的でかっこいいトッププレイヤーの一人。

一度、某ライヴ後の楽屋で終演後にサックスが聴こえて来て驚いたことがある。

鍵盤を担当する浅川太平さんは札幌出身とのことで90年代にどこかですれ違っているかもしれない。2000年代に頭角を現し、自身のソロアルバムも3枚ほどリリースしている。実は意識して聴いたのはこの作品が初めてだけど、幅広くアプローチ出来て、音色への感覚も素晴らしいピアニスト。

ベースの田中啓介君(通称たなけ)は東京に出て来てからの付き合い。割と細く長いつきあいを続けている。とても面白い人で、演奏だけでなくエンジニアリングもやるし映像もやる、作曲もするというマルチな人。そして以前見たライヴでは一音だけのためにキーボードを一台用意してライヴに持って来ていたりしてこだわりの人。いつも話をしているとつい長話になってしまうぐらい興味の幅も広く、私は自称タナケウォッチャーとしてたまに様子を見ている。

尾嶋優君(Jimanica)のバンドセットでもベースを弾いていたりしますがなんというか意識しなくても個性的な人でベーシスト。ルーツがイマイチ見えないのだがゴンとした力強いベースを弾く。このバンドでも如何なくその個性を発揮している。唯一のオリジナルメンバーなんだそうな。

そんなメンバーで作られた作品は様々なバラエティでジャズファンクありハードバップ、クラブミュージック的アプローチあり。

現代のジャズメッセンジャーズ的なニュアンスもあるし、ギターが入っていないのでジャズファンク路線の曲がソウル的な方向により過ぎずかえってヴァラエティのある楽曲を編成がまとめている印象がある。

タイトなリズムでパターンは幅広く、エネルギッシュに突破していく感じはまさに特急。吉岡君は「結成当初はギターも入っていたしレタスとかそういうサウンドを志向してた。本当にいろいろやっていて段々と削ぎ落とされた感じ。曲もだんだんやってるうちに狙っている感じの曲がかけるようになった」とバンドとしての積み重ねを振返ってくれた。

メンバーはいろいろと変遷してきている。こうしたメンバーのスケジュールを会わせて活動を続けることは大変なことだろうと思うが、結果密度が濃く、洗練されている。動画のようなドラムンベースでのシリアスな楽曲はかっこ良い

それでついに突如3/26に日吉のWanderwall Yokohamaでライヴをするということで雨の中でかけたら超満員。

この辺は地元だそうで、このバンドの演奏を楽しみにしている感じがハンパじゃない。誰もが演奏を楽しんでいて「これはローカルシーンの良い形だな〜」と感心した。

休憩中も観客は同伴者と「前の時より〜」とか「今日の演奏は〜」と日吉界隈の音楽好きが集まっている感じだった。メンバーもだいたいこのあたりに住んでいて、地元にもしっかり根ざしてみんなで地元のミュージシャンを応援している、楽しんでいるというのも良い。なにより素敵なミュージシャンがいる街というのもいいなと思った。

2ndセットでは女性シンガーのAYUKOさんがマイケル・ジャクソンのカヴァーで参加したりとさらにお祭り気分を盛上げていて良い空間だった。AYUKOさんもやっぱりこの界隈で活躍中でリラックスした雰囲気でパフォーマンスをしてとてもいい感じ。

とはいえバンドの演奏はシリアスに決めてくる。ベースとピアノのシンクロとドラムのタイトなビートにホーンセクションがガッチリかみ合って強力にマッチョな空間もあれば、ハッピーな雰囲気もあって、とにかく楽しい音楽。

楽曲のバラエティをそうした音楽へのマインドが支えているのかプロジェクトの一貫性の強さを保ちつつトータル2時間を飽きさせないのはさすがだった。

ライヴ後にパチリ。撮影:鈴木りゅうた

思いがけずライヴに行って、音楽や地域のこと含めとても良いものをみたなと思った。

日吉、良い街だな。「ワシントンDCのバンドだぜ!」とか「あいつはマンチェスターのミュージシャンだ!」みたいな感じで住んでる人の心に住む日吉のジャズマン、かっこいいっす。

文・写真:鈴木りゅうた

 

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