ジェフ・パーカー〜演奏とポストプロダクションのはざまに住む男

シカゴ音響系?

ジェパーカーといえばトータスのギタリストである。1967年生まれの彼のトータスへの参加は1998年から。

丁度その頃を振返るとメデスキ・マーチン&ウッドとか、後にすごい人気の出たソウライヴとかのジャムバンドとかの動きとか電子音楽もいろいろポピュラーな動きとして捉えられていてその当時はもうそういう音楽が一緒くたになっていて、同じようにエイフェックス・ツインなんかもすごく人気があった。ビョークなんかはもう大カリスマだったし。

ロックもヘヴィミクスチャ全盛だったりといろいろなものが交錯していて、それがひとかたまりにうごめいていたのだった。

そういう中にトータスもいたと思う。とはいえ私がシカゴ音響系なんていう言い方を一般的に捉えたのはもっと遅くて2003年とかそれぐらいだったんじゃないだろうか。

2004年に私が東京へ移ってから、国内的な動きとしてはすでにHEADZがこのあたりをほぼリアルタイムあるいは先を行く感じでフォローしているというかリードしている感じでだったんじゃないだろうか。

この界隈で活躍しているミュージシャンたちはすでにジャンルレスで、スタイルとしても技法としてもなんでもあり、カテゴリーとかツールとか、なんか分類分けに意味はありますかねえ、説明する時に便利なぐらいでしょう、という感じで、そういうことにある意味もはやドライで自由な感覚でやっているのが面白かった。全体的には少し電子音楽によっている感じはあったが、多分そこは重要じゃない感覚があった。

それでジェフ・パーカーはそういう流れも少し自分で感じていたのもあって、シカゴ音響派とかそういう住み分けとは別の文脈を感じていた。フルアコなんかでエレクトリックにバーンとやってて、しかもすごく音の抜いてある、響きで聴かせるギタリストというイメージを持っていた。その上ですごくオーガニックなテイストも持ち合わせている。

あと、聴いてきた印象もどちらかというとトータスという認識よりもブライアン・ブレイド・フェロウシップの1stアルバムの印象が強くて、その上で彼のソロ作品を聴いていたので語法としてはすごくジャズな人というイメージがある。

その後フェロウシップのアルバムにまた戻ってきて弾いていた。そのアルバムのインタヴューをブライアン・ブレイドにしていて、その時に「ジェフとは特に何も話さなくてもイメージを共有できる。過去のギターの歴史を彼ならではのやり方で滲ませながら、僕の音楽を肉付けしてくれる。景色の見えるギタリスト」というような評をジェフに対してしていた。


昨年末に某レコード店でかかっていた曲がとても薄暗くてかつ現代的でかっこよかったのが今年、国内盤としても発売された『The New Breed』。ヘヴィなループを用いながら、陰影の濃いギターをまぶしていて絶妙なアルバムだった。ドラムのジャマイア・ウイリアムスがまたこのプロジェクトにピッタリの雰囲気を出していて、絶妙に重たい雰囲気を作っている。編集された部分と生演奏をどう合わせて楽曲に生命をみなぎらせるかにチャレンジしている作品と感じた。


その流れで5月にトータスで来日した時にインストアライヴを行なった。

それがギター一本でインプロをやるという感じだったのだが、ほぼ素の音で弾く。

とてもナイーヴなプレイであった。

またその時のインタヴューでは様々なジャズギタリストの名前が上がっており、とてもルーツコンシャスな人なのだろう。ジム・ホールなどリリカルなプレイヤーの名前を最初に上げていて、その後の演奏を聴いてなるほどなと思ったのだった。


その後8月にコットンクラブへレコーディングメンバーを連れてやってくるというので観に行った。

ジェフはとても繊細な雰囲気でギターを弾く。

エフェクトはある程度並べていたが、あまり使わず思った以上にジャズ度が高いライヴになった。サンプラーもほどほどでとてもナイーヴでメロウなライヴだった。ジャマイアは自身のバンドで叩く時よりも恍惚としていて、気持ちのよい水中を泳ぐようなライヴ。

冷たい水にブワっと浮かんでいるような緊張感とリラックスした感覚の中にじっとしているような不思議な世界だった。

ジェフは常に緊張した面持ちで確かめるようにギターを弾き、アドリブパートではチャレンジしつつ、たまに思った感覚とは違ったという面持ちでプレイする。終わった後の安心した表情は毎回が一発勝負でライヴをこなしているという感覚を多いに感じさせた。

アルバムとはまた違う音像を提示しつつ、共通した、暗く深い音楽を提示しようとしている、そんな感覚がある。

インプロヴィゼイションとプロダクションの狭間で揺れ動いている、そんな印象だ。

また彼のギター的語法といえば、所謂現代ジャズギターの本流とは大きく流れが違うところも面白かった。それがトータスに在籍しているという所以なのだろう。思った以上にジャズギタリストという印象がライヴ中にあったが、伝統的なフォーマットとも違うし、カート・ローゼンウインケルの流れを組むわけでもない。もっといえばブルースは感じさせるが黒っぽいノリを全然出さない。そうしたところに彼のアティテュードを感じた。

(文・写真/鈴木りゅうた)

 

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