ECMへの移籍
ドミニク・ミラーはアルゼンチン生まれ、父はアメリカ人、母はアイルランド人、10歳でアメリカへ移住、その後アメリカとイギリスを行き来しつつ活動し、現在はフランス在住。
なんというか大西洋人とでもいう多国籍性だが、確かな演奏力を備えていて、スティングやフィル・コリンズ、ポール・サイモンなど超のつくビッグネームから信頼されてきたギタリストだ。
ソロアルバムも多数リリースしているが、この4月にECMへ移籍し『サイレント・ライト』をリリースした。
ジャズの有名レーベルでもあるECMだが、コンセプトに合えばすごくカテゴリーに対してはおおらかなレーベルだと個人的に思っている。
今回のドミニクのアルバムは彼の経歴を追う限りではポップスやロックの系統の人のように見えるのだが演奏してきた中身や今回のアルバムの方向性を鑑みるとさもありなんという内容。
例えばジスモンチとかそうした感覚に近いものを感じさせる作品になっている。メンバーも彼と他にはパーカッションを入れるのみという空間を聴かせる音楽でECMぽい(というかECMからだからそりゃそうか)。ガットギターをメインに据えて余韻を活かした音はまさにECMという感じのサウンドプロダクション。
弦がつま弾かれる音の美しさを味わうという作品に仕上がっている。さりげないパーカッションも美を引き立てている
それでいろいろ建て込んでいる中ではあったがライヴに足を運んだ。
私が観たのは4/24のステージだ。
年配のグループが多く、ジャズファンという感じではなくギター好きやスティングファンが多めといった印象。
この日はギタートリオでベースにフランスから来たニコラス・フィッツマン、ドラムは数々のセッションをこなしてきたマイルス・ボウルドというメンバー。
あまりジャズ度は高くないが、とにかくドミニクは上手い。音に対するリテラシーの高さがハンパじゃないというか。一緒に演奏する二人も余裕な感じでこなれている。切迫感はないがそういう類いの音楽ではなく、スリリングなものが好きな向きには物足りないだろうがギターを堪能したい向きには十分に満足なライヴだった。
それで、実際にライヴを見るとジャズとクラシックとタンゴとニューエイジ系の何かが混ざっているような。ウインダムヒルとかでアダム・ロジャースとかがやりそうな感じというか。
ライヴはがっつりトリオなのでアルバムとはだいぶ違った感じだったが、程よくエンターテイメントもありギターのインストをどう聴かせるか考えつつ、あまりお客に合わせ過ぎない感じが自分の音楽を維持していてよかった。
ギターはタカミネ製で自分で「アルゼンチン育ち、アメリカ人とアイルランド人のハーフ、フランス在住でギターは日本製!」と冗談を飛ばしていて”ああ、この人は世界人だな”と思った。ギターの腕だけでなくそういう人柄もビックネームから愛されるのだろう。
文・写真:鈴木りゅうた
1: ホワット・ユー・ディドゥント・セイ (What You Didn’t Say)
2: アーバン・ワルツ (Urban Waltz)
3: ウォーター (Water)
4: バーデン (Baden)
5: アン・パッサン (En Passant)
6: エンジェル (Angel)
7: カオス・セオリー (Chaos Theory)
8: フィールズ・オブ・ゴールド (Fields Of Gold)
9: ティザーヌ (Tisane)
10: ヴァリウム (Valium)
11: ル・ポン (Le Pont)
使用ギターはタカミネではなくヤイリではないですか?
コメントありがとうございます。
2年前なんで記憶をたどっても、もうかなりあいまいですが、MCで確か言ってました。ヘッドにロゴとかは無かった気がします。
今年の来日公演はどうだったんでしょうか。見に行けてないのでわかりませんが、素晴らしいギタリストです。